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症例報告

外耳炎に対し全耳道切除を実施した症例

2024.5.29
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今回は動物病院でよく遭遇する外耳炎、およびその治療方法の一つである全耳道切除術に関してお伝えします。

 

外耳炎は犬、猫で一般的な病気の一つで、耳道の炎症により引き起こされ、痒み、赤み、腫れ、肥厚など様々な症状が起きます。

原因としてはアレルギー性皮膚炎が背景にある場合も多く、そのほかの原因としては細菌感染、マラセチア感染、寄生虫(ミミダニ)、腫瘍など、様々です。

 

 

今回の症例は猫で両耳の重度の痒みを主訴に来院されました。

慢性的な炎症により耳道は腫れ上がり、耳の奥が目視できない状態でした。

 

 

一般的な急性の外耳炎の治療のほとんどはステロイド剤や抗菌剤、抗真菌剤などを含む点耳薬での治療がメインになることがほとんどです。

しかし今回の症例のような慢性外耳炎で重度に耳道が肥厚し、炎症が強い症例では点耳薬や痒み止めの飲み薬だけでのコントロールが困難なことがあり、その場合は全耳道切除を実施することがあります。

 

↑今回の症例のCT画像です。

左耳では重度に耳道が狭窄し、潰れてしまっています。

 

CT検査では通常の視診だけでは判断できない、耳の奥や鼓膜の奥(中耳)の状態も詳細に確認できます。

 

内服・点耳薬でのコントロールが困難であったため、今回は全耳道切除を実施しました。

↑手術前の写真

 

↑耳道を摘出した後の写真

 

↑奥に写っているくらい部分が鼓膜の奥の中耳になります。

全耳道切除に加え、鼓室胞切開も行い、鼓膜の奥もしっかりとキレイに掃除します。

 

↑手術終了後

 

全耳道切除は慢性外耳炎治療の最終手段ですが、かなり重度の痒みからも解放させてあげることが可能です。

ただし手術のリスクとして

①出血

②術後の耳の奥での感染

③顔面神経麻痺(まばたきができなくなることがあり、その症状は一過性のこともあれば永続的に残る可能性もあります)

などが挙げられるため、現在ある症状(耳の痒み、炎症の程度)などから総合的に判断し、手術の適応か見極めることが非常に重要であると言えます。

 

外耳炎は動物病院で一般的によく遭遇する病気のため、お耳のトラブルで気になることがあればお気軽にお問い合わせください。