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症例報告

犬の乳腺腫瘍について

2024.5.09
ブログ

こんにちは。

動物病院でよく遭遇する乳腺腫瘍に関してお話しします。

乳腺腫瘍は避妊手術をしていない雌で発生することが多く、犬・猫ではその予後についても違いがあるので、今回は犬の乳腺腫瘍に関してお伝えします。

 

避妊手術を受けていないワンちゃんでは年齢が高くなると、乳腺にしこりが触れることがあります(乳腺腫瘍発症の中央値は9歳くらい)。乳腺にできたしこり=乳腺腫瘍、というわけではないため、診断のためには細胞診検査(細い針をしこりに刺し、その細胞を診る検査)を実施します。

細胞診検査はおおまかに乳腺腫瘍、もしくは乳腺にできたそのほかの腫瘍(肥満細胞腫、悪性黒色腫など)の鑑別に有効ですが、細胞診検査のみでその腫瘍の良性・悪性の判断は困難なことが多いとされています。

 

海外の報告では犬の乳腺腫瘍は良性が50%、悪性が50%と言われており、小型犬が多い日本においては良性腫瘍の割合が多いとされていますが、確定診断には病理検査が必要になるため、しっかりと診断をつける必要性があります。

 

↑このワンちゃんは左第4乳腺に腫瘍があり、そのほかにも写真では見えづらい小さな乳腺腫瘍が散見していました。

 

 

乳腺腫瘍の治療の原則は手術になりますが、その手術方法は切除する乳腺の範囲によって、1.両側乳腺切除、2.片側乳腺切除、3.領域乳腺切除、4.単一乳腺切除、5.単一腫瘤切除などがあります。

乳腺腫瘍に関してはしっかりと腫瘍から距離をとって切除した場合、そのほかの乳腺を切除することでの予後への影響はないとされていますが(広く切除した方が長生きというわけではない)、術後に残った乳腺に腫瘍が新たにできてくることが比較的多いとされています。

今回は比較的若かったこともあり、相談の上、片側乳腺切除を実施しました。

↑乳腺を切除した後の写真

 

↑縫合後の写真

 

↑摘出した乳腺

 

 

術後の傷は広く見えますが、しっかりと痛み止めを使うことで術後からすぐに元気に動くことが可能です。

 

↑このワンちゃんは右第4、5乳腺、左第3乳腺に腫瘍が見つかり、細胞診の結果、乳腺腫瘍が疑われたため手術を実施しました。

比較的高齢になってきており、予防的に全ての乳腺を切除する意義が低いと考え、右第4、5乳腺の領域切除、左第3乳腺の単一乳腺切除を実施しました。

また避妊手術も行っていなかったため、同時に避妊手術も実施しています。

 

このように同じ乳腺腫瘍であっても発生状況や年齢、腫瘍の大きさなどでも切除方法などは変わりますし、病理検査結果によっても今後の方針は変わるため、しっかりと治療・診断することが非常に重要です。

 

最後に乳腺腫瘍の予防のお話です。

雌犬では2回目の発情が来る前までにしっかりと避妊手術をすることで、将来の乳腺腫瘍のリスクはかなり下がると報告されています。

 

乳腺腫瘍・避妊手術などに関して気になることがありましたら、当院までご相談ください。